フォトエッセイ 『海がもっと好きになる 〜うみまーる流 水中写真術〜』 連載中・・・ 

Vo.5 自然で楽な潜り方

継続は力なり!?


ずいぶんご無沙汰してしまいました。
夏本番になり、撮影に熱中して、
執筆を延ばし延ばしにしているうちに、
書こうと思っても筆が進まなくなり、
こんな時期になってしまいました。
継続は力なりと言いますが、
ダイビングでも執筆でも、
ペースを保って取り組むことが大事ですね。

前回の中性浮力で撮影しているビデオが
少し分かりにくかったかもしれないので、
今回も中性浮力の話をしようと思います。

うみまーるの2人が中性浮力で撮影している
という話をすると、
「海の環境を守るために、
着底しないように無理をして、
苦労しながら撮影しているんだな」
と思われるかもしれないですが、
無理をしているわけでは全くないです。
自分たちにとっては、
中性浮力が一番自然で楽なんです。

無理をせずに、少しずつ。



実は、前回は、
「まずはそっと着底して撮影しましょう」
という話にしようと思っていました。
①まず、膝と左手をついて、
②その次に、膝は着かずに左手だけで体を支えて、
③やがて、左手の人差し指だけで
体を支えられるようになったら、
④最後に、どこにも触れずに中性浮力で
という手順です。

自分たちもそんな順序で
中性浮力で撮影できるようになったからです。

それで、ピンクのサンゴにいる
カンザシヤドカリに会いに行きました。
Kindonがビデオを回し、
A-Suがデモンストレーション役です。
A-Suが向こうから泳いできて、
サンゴのところでカンザシヤドカリを見つけ、
海底を見て、生きものがいないか確認して、
それから膝を着く・・というところで、
海底に目を向けると、
ヒメダテハゼが「何してんの?」という感じで
A-Suの方を見上げていたのです。
このまま膝をついたら
ヒメダテハゼの巣穴を壊してしまう
かもしれません。

それで、着底した撮影法を
無理にビデオに撮らなくても、
普段の自分たちの撮影法を伝えるだけで
いいのじゃないかということになり、
前回のような話になったのです。

大丈夫、海が支えてくれる。



中性浮力は、
二足で歩くのに似ていると思います。
二足で歩くのって、頭で考えると、
バランスを取るのがかなり難しい
ように思いませんか。
でも、実際に歩けるようになってしまえば、
自然にバランスを取って、
自由自在に動けるようになりますよね。

それと同じで、
中性浮力も不安定なように見えますが、
実際にできるようになると、
とても安定しています。
だって、海が
全身を支えてくれているんですから。

陸上で体を支える二足の代わりに、
水中では、海の水が支えてくれている。
体をふんわりと包み込むように。

しかも、
両手が自由に使えるようになるので、
カメラの操作もしやすくなります。
二足で歩けるようになった赤ちゃんが、
急に行動範囲を広げるように、
中性浮力が取れるようになると、
ダイビングの世界もずっと広がります。
そして、
海がもっと楽しくなると思うのです。

多くの出会いや実りを増やすために、
まずは、枝をのびのびと伸ばしてみませんか。























目の前のカメラより、
周りの魚が気になるヒトスジギンポ。
今日も何か新しい発見があったようです。
(座間味島)
SEA&SEA DX-2G


































中性浮力での撮影は、
海に全身を支えてもらっているような
不思議な安心感がある。
リラックスしてカメラを構えると、
ヒトスジギンポも「こんにちは」と
穴から顔を出してくれた。
(座間味島)

SEA&SEA DX-2G 動画モード































ちゅら海からの風 Okinawa, where the sea meets the sky

ありのままの自然の中でも、ひときわ美しい時間があります。
沖縄の海と空、太陽と風、自然が織りなす時の流れ。そこではぐくまれる豊かな命。輝くようなその瞬間を綴りました。あなたにつながる空の向こうには、かならず海が広がっています。いつもあなたに、ちゅら海からの風が届きますように。

書 名 :ちゅら海からの風 Okinawa, where the sea meets the sky
著 者 :うみまーる‘井上慎也+髙松飛鳥’
発行日 :2010年3月16日
発行所 :求龍堂
判 型 :200×220mm・ソフトカバー・96頁オールカラー
価 格 :2,100円(税込)

「ちゅら」とは、沖縄の言葉で「清らか」の意味です。ただ見た目にきれいなだけでなく、内面性の美しさも表しています。「海が健全で、本当の意味でいつまでも美しくあってほしい」。そんな願いを込めて、タイトルをつけました。