フォトエッセイ 『海がもっと好きになる 〜うみまーる流 水中写真術〜』 連載中・・・ 

Vo.6 仲良くなるには

防具を外してみよう



前回のフォトエッセイをアップしてから、
オーストラリアに行ってきました。
目的は、
今回もアシカたちと遊ぶことです。
オーストラリアアシカの子どもたちは、
野生の生きものとは思えない程の人懐っこさなので、
自分たちも、つい遊ぶことに
夢中になってしまいます。
でも、ちゃんと撮影もしてきました。



アシカの撮影では、
フィッシュアイレンズなど、
超広角レンズを使います。
超広角レンズ用のドームポートには、
たいてい、フード(またはプロテクター)という
黒い帽子のつばのようなものが、
上下についています。
画面外からの強い光を防いだり、
ポートのレンズ面をキズから守ったりするためです。

でも、
カメラを向けられるアシカの気持ちで考えると、
どうでしょう?
ポートの上下に張り出したフードは、
「カメラに触るな!」
と威嚇しているようにも見えます。

そこで、うみまーるは、
すべての水中ハウジングから、
フードを取り外しています。
フードのないドームポートは、
つるんとまるく、やさしげで、
つい触ってみたり、
のぞきこんでみたくなると思いませんか。

アシカだって同じなのです。
まずはまるいポートをのぞきこみ、
ヒゲで確認するように触ってきて、
それから、ポートにキスしてきます。
そしたら、カメラは下して、
自分たちも、おでこにキスしてもらうのです。

中には、手にもキスしてきて、
自分でシャッターを押すアシカもいます。

アシカに限らず、イルカや魚だって、
フードがない方が、
カメラのすぐ近くまで来てくれます。
だから、
うみまーるは、どんな撮影の時も、
フードを外しています。


まるい心で楽しむ。


フードを外している話をすると、
カメラに詳しい人は、
写りに影響するんじゃないかと心配します。
でも、フレアなどの光のいたずらも、
海の中では楽しげで、
それはそれでいいんじゃないかと思うのです。

フードを外した、むき出しのドームポートは、
とてもキズつきやすいです。
サンゴや岩にかすっただけでも、
キズついてしまいます。
でも、だからこそ、
どこにもぶつけないよう、
気を付けるようになると思いませんか。

相手の痛みを知る。


グローブ(軍手)も同じです。
着けていれば、自分は痛くないので、
ついつい何でも触ってしまうかもしれません。
でも、触ることによって、
傷ついている生きものがいるかもしれません。
素手で潜れば、触ることにも慎重になります。
相手の痛みにも気づくことができます。
その分、海にやさしくなるのです。

うみまーるは、
グローブを着けないことはもちろんのこと、
暖かい季節は、スプリングといって、
半袖半ズボンのスーツで潜っています。
ヒジやヒザがむき出しなので、
少しでもサンゴなどに触れた時に、
すぐに気付いて、離れることができます。

ダイビングがうまくなれば、
フードやグローブなどの鎧を
少しずつ脱いでいきましょう。
そうすれば、きっと、
今まで以上に、海も微笑みかけてくれるはずです。


次は・・・
Vo.7









フードのないポートにアシカがキス。
その後も、おでこにキスしてくれた。
(西オーストラリア)
SEA&SEA DX-2G 動画モード






フードが付いているカメラ。
カッコいいけど、親しみにくい感じ。

フードを外したカメラ。
親しみやすく、のぞきこみたくなる感じ。

うみまーるのカメラたち。
すべてフードを外してある。








マンタの前に写ったフレア。
虹色の玉のようで、光の音が聞こえてきそう。
(石垣島)
Nikon F100 + 17-35mm
+ NEXUSハウジング
富士フイルムVelvia100







仲良くなったアシカが、
友だちをつれて遊びに来てくれた。
(西オーストラリア)
Nikon F100 + 16mmフィッシュアイレンズ
+ SEA&SEAハウジング
富士フイルムVelvia100




















ちゅら海からの風 Okinawa, where the sea meets the sky

ありのままの自然の中でも、ひときわ美しい時間があります。
沖縄の海と空、太陽と風、自然が織りなす時の流れ。そこではぐくまれる豊かな命。輝くようなその瞬間を綴りました。あなたにつながる空の向こうには、かならず海が広がっています。いつもあなたに、ちゅら海からの風が届きますように。

書 名 :ちゅら海からの風 Okinawa, where the sea meets the sky
著 者 :うみまーる‘井上慎也+髙松飛鳥’
発行日 :2010年3月16日
発行所 :求龍堂
判 型 :200×220mm・ソフトカバー・96頁オールカラー
価 格 :2,100円(税込)

「ちゅら」とは、沖縄の言葉で「清らか」の意味です。ただ見た目にきれいなだけでなく、内面性の美しさも表しています。「海が健全で、本当の意味でいつまでも美しくあってほしい」。そんな願いを込めて、タイトルをつけました。